製品の品質管理には①母線の選択②伸線機の設定③潤滑液管理が重要であるといわれています。
弊社は潤滑液を最適な条件でご使用頂く為に必要なデータを潤滑液の定期分析という形で提供させて頂いております。
以下に各分析項目について説明致します。
1. 外観
2. 濃度
3. pH
4. 濾過残差
5. 銅の濃度(金属濃度)
6. 細菌数
外観に関してはラップルの場合、新液は乳白色をしていますが、次第に青色がかってきます。(中間・太線用油剤の場合は緑色がかってきます。)
最終的には濃緑青色になり、ここまで使用しますと、かなりの潤滑液の劣化が予想されます。この時、pHも8.0を切っている場合が多くなり、変色の出る恐れがあります。
潤滑液中の油剤成分の量を割合(%)で算出します。新液の場合は老廃物等が存在していないため濃度は実濃度として表せますが、使用経過と共に老廃物を含むみかけの濃度として表れます。そのため、老廃物を除いた実濃度はそれよりも低くなっています。伸線で発生する銅粉と油剤成分との反応物等によって有効成分が消費されると、実濃度は低下するため定期的な新液の補充が必要となってきます。設計濃度を大幅にはずれると期待した性能は得られなくなるため、適正濃度を維持するため次の各項が必要になってきます。
① 濃度管理しやすい体制の整備(水溶性潤滑剤の統一、専任管理者の配置など)。
② 設定濃度に相当する原液と水の補給。
③ 定期的な濃度測定による濃度補正。
弊社では濃度測定には赤外線水分計測定と屈折計測定の2種類の測定を行っています。
・赤外線水分計測定 | |
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赤外線水分測定装置を用いて潤滑液を105℃で加熱し、水分を蒸発させ、得られた収量から不揮発分の割合(%)を算出します。 |
・屈折計測定 | |
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伸線現場で広く使用されているアナログ屈折計にて屈折率(Brix)により濃度を測定します。デジタル屈折計は潤滑液の濁度が強い場合でも数値が出るというメリットがありますが、潤滑液等のエマルジョンは測定ごとにバラツキが生じる傾向が高いため、正確な数値が掴みにくいというデメリットもあります。 屈折計は短時間で数値が出るという簡便さはありますが、濁度の高いエマルジョンでは測定ごとのバラツキが大きく屈折計測定自体の限界を示しているともいえます。 |
一般的な潤滑液は弱アルカリ領域で管理されます。潤滑液が古くなるとpHは低下していき、潤滑液の安定性や潤滑性能、線表面の仕上がりに影響がでてくる可能性があります。
弊社ではガラス電極pH計を用いてご使用の潤滑液のpH値を確認します。また伸線現場では簡易的に測定できるpH試験紙(pH6.8~9.2の中性~弱アルカリ領域が測定できるCR試験紙)が広く使用されています。pH8.0を一つの目安とし、それ以下にならないようご管理下さい(極細線の場合は非常に薄い濃度で使用され、新液の状態でもpH8.0以下になることもあるため管理方法は異なります。)。
pH低下の対処法としては原液の補充、pH調整剤の添加等があります。ただし、長期使用によるpH低下の場合はそれ以外の潤滑成分も劣化しておりpHを上げただけでは回復は難しくなるため、潤滑液の総入れ替えが望ましいです。また、バクテリアによるpH低下も考えられますのでその場合は殺菌剤によるご対応をお願い致します。
保留粒子径0.6μmのガラス繊維濾紙を用いて、潤滑液中に分散されている残渣を濾過分取します。ガラス繊維濾紙に分取された残渣を見ることによって潤滑液中にどのようなものが分散されているかを簡易的に知ることができます。分取物が茶色の金属粉状ですと、銅粉の存在が示唆され、濃緑色状ですと銅石鹸の存在が示唆されます。どのくらいの残渣が分取されたのかを有姿に対する分取量で濾過残渣ppmとして算出しています。また、そのガラス繊維濾紙上の残渣を顕微鏡で撮影し分析報告書に添付しておりますのでご確認下さい。
使用ガラス繊維濾紙 ADVANTEC GRASS FIBER GS-25
ICP発光分光分析装置(SII SPS7800 Plasma Spectrometer) を用いて銅イオンの量を測定します。最新のICP発光分光分析装置を用いておりますので、極微量の濃度でも測定できます。銅イオンの量を測定する事によって劣化の度合いを調べる事ができます。
サンアイバイオチェッカーTTCを用いて使用液中のバクテリアの有無を確認します。測定範囲は103~107/mlまで測定できます。好気性菌、嫌気性菌の区別はできませんが、好気性菌発生→(通性嫌気性菌発生)→嫌気性菌発生へとスライドしていきますので好気性菌の時点でなんらかの対処が必要になります。対処方法としては殺菌剤の投入が一般的となります。